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福島原発事故10年で佐賀県知事に要請

福島原発事故10年にあたり、佐賀の脱原発運動の連絡組織「脱原発佐賀ネットワーク」で、佐賀県知事に質問・要請文を各団体ごと、一斉に提出しました。3月11日、県庁で山口知事本人が応対されました。

「さよなら原発!佐賀連絡会」から提出した文書を以下に紹介します。
当日の知事との面会では、ネットワークを代表して世話人の豊島が7分ほど発言しましたが、その内容は、知事の発言も含め、その下に続けて紹介します。
 同時に提出した諸団体の文書はこちらです。(随時追加)
  玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
  原発と放射能を考える唐津の会
  玄海原発反対!からつ事務所

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  PDFはこちら      2021年3月11日
佐賀県知事 山口 祥義 様
                さよなら原発!佐賀連絡会 
                代表 豊島 耕一

3.・11福島原発事故10周年にあたっての質問書

 「原発は明るい未来ではなく、破滅でした。」--- 双葉町に掲示された標語「原子力明るい未来のエネルギー」の作者、当時小学6年生だった大沼勇治さんの言葉です。(毎日新聞2021年2月12日)。
 福島原発事故から10年が経ちました。福島県では現在も4万人以上の人が故郷に帰れず、また多くの人が放射能に汚染された土地で暮らし続けています。災害関連死は2,300人、そのうち100人を超える人が自殺です。帰還困難地域の面積は337平方キロメートル(2020年3月現在)、佐賀市の面積の78パーセントにあたります。
 知事は玄海原発3、4号機の再稼働を2017年4月24日に事前了解されましたが、玄海原発で、あるいは他の原発で、福島第1原発のような過酷事故がこれから繰り返されることはないとお考えでしょうか。

福島原発事故「10年目の真実」NHKメルトダウン取材班、3月3日配信)で明らかにされた、当時、近藤俊介原子力委員長が極秘に作成した「最悪シナリオ」では、帰宅困難地域は東日本全体に及ぶ可能性があったとされています。2号機の格納容器の爆発はたまたま継ぎ目や配管の接続部分に隙間ができたことで免れていますし、4号機がメルトダウンを免れたのは、隣接する原子炉ウェルからたまたま水が流れ込んだからという偶然によるものです。
福島第1原発の廃炉作業も、その危険性と経済的負担(約8兆円)は、長く私たちを苦しめることになります。原発は私たちの暮らしに必要なのかという問いが、今突き付けられています。
ドイツは、2022年に脱原発を達成しようとしています。日本は、南海トラフ地震がこれから30年の間に70%の確率で起こると考えられている地震国です。日本も、破滅しないためには全原発を廃止する具体的な計画が今必要ではないでしょうか。

次の通り質問しますので、1か月以内に回答して頂くようお願いします。(以下は本会独自の質問です。代表発言で出された疑問にも機会を見てお答え頂くようお願いします。)

1. 原発立地県の知事
① 「原子力に関わるすべての者が二度と福島のような事故を起こさないという強い気持ちで、緊張感を持って取り組まなければならないというのが変わらぬ思いだ。事故を決して風化させないという強い気持を持ち続け、原発立地県の知事として、県民の安全を大切にして原子力発電所と真摯に向き合っていく(2日、井上議員への答弁)」と、いわば精神論を強調されますが、「強い気持ちと緊張感」だけで重大事故が防げるわけではないのは自明です。原発事故のリスクは社会の維持のためやむを得ないとお考えなのでしょうか。

② 原発稼働容認だった佐藤雄平福島県知事(事故当時)の時に福島原発事故は起こりました(前任はプルサーマルに反対した佐藤栄佐久知事)。知事は、佐藤雄平前知事にも事故に対して何らかの責任はあるとお考えでしょうか。同じく原発稼働に対して県民を代表して意見を述べる責任を負われる行政官としてお訊ねします。

2. 原発事故の認識
① 知事は18日の所信表明で「このJCOの事故をきっかけに、原子力災害対策特別措置法が制定され、国全体が原発事故というものにしっかりと向き合いながら対応してきたにもかかわらず、再び事故は起こりました」と述べられましたが、国会事故調報告書にもあるように保安院が「規制の虜(規制機関が被規制側の勢力に実質的に支配されてしまうような状況)」になってしまっていた問題や、東電刑事裁判では経営側が津波の危険性に何の対策も取らなかったばかりでなく、隠ぺい工作まで行っていたことが明らかになっています。国全体が原発事故が起こる可能性にしっかりと向き合わなかったから、福島原発事故は起こったと私たちは考えますが、この知事の所信表明での認識(下線部)は、上記事実とも、また原子力規制委員会設置法の主旨とも異なり、根本的な誤りではないでしょうか。

② もし知事が述べられたように「しっかり対応しても」重大事故が起こるのであれば、そもそも原発は動かしてはならないのではないでしょうか。

3. 九州電力の対策
県は九州電力に「全社を挙げて安全意識を共有していくこと」について申し入れを行っていますが、2月20日、旧唐津発電所で立て続けに同じ場所で2度の転落死事故が起こっています。この事態は私たちに、九州電力は重大事故に対応できないという疑問を抱かせます。死亡事故を繰り返す原因の徹底究明と、それから得られるであろう教訓については、原発についても総点検が必要と考えますが、知事はどうお考えですか。

4. 廃炉ごみ
① 日本で唯一解体が終了したJPDR日本原子力研究所動力試験炉(電気出力1.5万kW、BWR)の廃炉ごみ(注)は敷地内の保管施設で管理されていて、今も廃炉ごみの処分場はないようです。玄海原発1、2号機の廃炉ごみは、すでに廃炉作業中ですが、どこにどのようにして処分・管理されますか?
(注)「廃炉ごみ」とは、原子炉の解体などで生じる廃棄物のうち、低レベル放射性廃棄物で放射能レベルが100ベクレル/kg以上のもの。

② 玄海原発に隣接して造成されている12haの土地が、廃炉ごみの置き場にならないという保証がありますか。また、この12ヘクタールの土地を九電が廃炉ごみの置き場として使うことは可能ですか。その条件は何でしょうか。

5. 新検査制度
昨年7月知事は規制委員会に、検査で関係自治体が直接関与できる仕組みの構築を申し入れたそうですが、「簡単に言うと、県のほうから検査に行くということのプッシュができるようにという制度を内蔵すべきではないかということです」と井上議員に答弁されていますが、「関係自治体が直接関与できる仕組みの構築」とは具体的にどういうことを考えておられますか。

6. 再生可能エネルギーと電力市場
知事は「原子力発電への依存度を可能な限り低減していくためにも、再生可能エネルギーの導入等を積極的に促進していくべき」(2017年4月24日、「玄海原発再稼働について」)と述べられています。私たちは再エネ問題とは無関係に原発は止めるべきと考えますが、しかし知事の再エネ積極促進の方針にも反する事態が生じています。
 昨年末から今年1月にかけ、卸電力市場での取引価格が異常に高騰、1キロワット時あたり最大で251円(2019年度の取引平均価格の約30倍)にまで跳ね上がり新電力は大打撃を受けました。原因は卸電力市場運営の不透明さや、海外では行われている「発電と販売の分離」が日本では導入されず大手電力に圧倒的な市場支配力があるため、と考えられています(2月21日の朝日新聞)。
 新電力が減少すれば再生可能エネルギーの拡大も弱まりますし、電気料金が高騰する恐れもあります。知事はこの問題をどのようにお考えですか。

          連絡先  杉野ちせ子 840‐xxxx 佐賀市xxxx
            xxx-xxxx-xxxx

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3kgeneations.jpg
佐賀新聞の報道サガテレビの報道(右画像clickでも)。

以下は、当日の知事との会見での豊島の発言と、知事の発言、それに短いやり取りです。

「さよなら原発!佐賀連絡会」の豊島と申します。本日は、知事にはお忙しい中、このような機会を設けていただきありがとうございます。本日集まりました団体を代表して、ご挨拶と、意見を申し上げます。また、各団体からもそれぞれ質問及び要請を提出しますので、各団体にご回答頂くようお願いします。これからの私の発言に対しても、機会を見てご意見を頂ければ有り難く存じます。

1.大飯判決に関連して

昨年12月4日、大阪地裁は大飯原発許可を取り消す判決を出しました。判決はその「要旨」の(4)に、規制委員会の審査・判断における過誤として次の指摘をしています。
「経験式が有するバラツキを考慮した場合,これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく,本件申請が設置許可基準規則4条 3項に適合し,地震動審査ガイドを踏まえているとした。」
この点は玄海原発にもそのまま当てはまると考えられますが、いかがでしょうか。そもそも、県はこの判決のこの点について、あるいは他の点について、検討をされましたでしょうか。
saga-eq-pr.jpgこの判決は、玄海に当てはめると、玄海原発で想定された地震動620ガルは過小評価と判断することを意味します。実際、5年前の熊本地震では益城町で最大加速度1,580ガルを記録しています。県の耐震診断を促進するチラシ(右の画像)では、「佐賀で大地震が起こるのは明日かも知れない。いつどこで起きるか分からない大地震にそなえて」と大書してあります。玄海町が例外であると言えるのでしょうか?

2.トリチウム放出問題
トリチウムは、政府が計画している福島原発事故からの汚染水(放射性物質の部分的除去後の水)の海洋放出でも問題になっている放射性物質ですが、玄海原発からは国内原発の中で最も多量に放出されて来ました(資料1)。再稼働とともにトリチウム放出も再開されました。これと関連性を疑われるのが周辺での白血病の多発です。森永氏の調査の資料を添付します(資料2)。この疑問について県独自で調査・分析をしていただくようお願いします。
1973 年から 2010 年の間、原発3キロ圏内の 玄海町8地区・鎮西町1地区で行われた「北部地区住民検診」の調査データが秘密にされていますが、このデータに県として関心がおありでしょうか。これを入手、分析するつもりはありませんか。もしそうでなければその理由を知りたいと思います。

3.原発避難の問題について
原発事故時の住民避難はもともと想定どおりうまく行くとはほとんどだれも信じていないと思います。ましてや現在のコロナ感染状況下での避難ではなおさらでしょう。現状では、通常時と比べてどの程度「能率」が低下すると見積もられているでしょうか(例えば,24時間以内に避難できる人数がどの程度減るか,など)。それともそのような見積もりや推定は行っておられないのでしょうか。
また、重大な事故と所内での感染とが同時に発生すれば、事故対応も困難になります。このような場合の想定は行われているかどうか、九電に確認していただきたいと思います。
原発避難ではSPEEDIを利用しないとされ、その理由として、この予測通りにはならないことがあるから、というお考えと承知しています。では、風向きなどは無関係に、常に一定の方向、ルートで避難するという方針でしょうか。もしそうであれば、たとえ外れることがあるとは言えSPEEDIを利用した場合と、固定したルートで避難する場合とで、後者が統計的・確率的に被ばく低減に有利である、あるいは劣らないという根拠を示して頂くようお願いします。

4.使用済み燃料(核のゴミ)について
運転を続ければ使用済み燃料もそれだけ増え、搬出先の見通しがないまま発電所にたまる一方という身近な問題が差し迫っています。もちろんそれだけでなく、この最終処分が不可能に近いという事実もよく知られています。
CO2削減で原発に期待する向きもあるようですが、ウランの資源量は、発熱量換算で天然ガスの半分以下という事実にも注目すべきです。ウランを、せいぜいでも100年間で使い切ったとして、そのツケを私たちの子孫の3,000世代(10万年)にもわたって負わせ続ける行為というのは、正気の人間のなせる業(わざ)とは思えません。10万年を過去に遡ればネアンデルタール人の時代、日本では縄文人はわずか1万年前、彼らはこんな厄介なものを私たちに残したりしていません。
この点をどうお考えでしょうか。放射能を消滅させる処理方法についての確証など誰も持たないと思います。

5.県民・市民や、市民団体との直接対話をお願いします
知事は1期目に就任されて間もない頃、2015年4月に、今回のような私達との面会の機会を設けていただきました。終わってメディアの前で「皆様方のご意見をお伺いすることが出来て、意義があったと思っております。これに限らず、またこういう機会を設けていこうと思っております。」と述べられました。しかし玄海原発の再稼働に際しても、県と県民、市民との直接対話は実現されませんでした。2017年2月から3月にわたって開かれた「説明会」も、あくまで経産省などによる「説明」であって、県と県民との対話ではありません。
私たちの参加団体の一つ「裁判の会」が一昨年2月に知事あての質問を提出した際、回答される場での知事または責任ある担当者との直接対話を求めたところ、知事からは「直接対話することは考えていない」との回答でした(2019年3月15日付文書)。これは2015年の姿勢とは180度異なりますが、本日直接お会いできたことを機会に、実質的な意見交換の場を、—— もちろん知事ご自身が頻繁にというわけにはいかないと思いますので、原発問題の担当者と、直接やりとりができる場を設けていただくようお願いします。
以上で、諸団体を代表しての発言を終わります。ありがとうございました。

添付資料
(資料1 プリント末尾に挿入)トリチウム放出量推移
https://pegasus1.c.blog.ss-blog.jp/_images/blog/_8db/pegasus/tritium-emi2020.jpg
(資料2)森永徹氏の発表 (第56回日本社会医学会総会,2015 年 7 月 25・26 日,久留米大学医学部)
http://ad9.org/pdfs/nonukessaga/y2017/leukaemia-genkai.pdf
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1401577.gif山口知事の発言と最後のやり取り
参加者のお一人が文字起こしをされていますので、編集して転載します。読みやすくするため「エー」などの間投詞は削除しました。カッコ内は注です。
間投詞などを省略しない発声に忠実な記録はこちら
山口知事:
それでは私の方から。本日はほんとにありがとうございました。皆さんのご意見や思いを直接伺わせていただきました。そして今日は県の先生も(県議の意味)3人来ていらっしゃいますけれども、県議会はもとより皆さん方からご意見ご質問を承っておりますので、真摯に対応していきたいと思っております。


「マイク無いんですか?」(難聴者の参加者)

東日本大震災、そして福島第一原発の事故からちょうど10年になります。私は当時長崎県におりまして、道路がなかなかスムーズに通じていないという話がありましたので、いち早く長崎大学と連携して長崎丸という船で福島県の小名浜港、岩手県の方に送ることに決めましたことを憶えております。ま、10年経って今日もテレビでなどでいろいろ映像などが出てまいります。えー、津波のことですとか、福島、原発の、第一原子力発電所の映像、そういったものが頭から離れることはありません。

我々は決してこれを風化させてはならないんだと思っております。そして原子力に関わる全ての者、これは事業者に限らず、その、当然我々も含めてでありますけれども、もう二度と福島のようなことは起こさせないという強い気持ちで緊張感を持って取り組んで行かなけれなならない、取り組む覚悟です。私はもう知事になった時から、どうしてもそこは、今在る玄海原子力発電所とどう向き合っていくのか、というところがとても、ずっと強い思いとしてございます。

廃止措置に、1号機2号はなりましたけれども、それだけとっても長い間、我々はそれに向き合っていかなければいけないという強い覚悟をしてございます。そして、私自身は原発立地県の知事として、県民の皆さんの安全を何よりも考えまして、玄海原子力発電所に真摯に向き合っていかなければならないと思いますし、皆さん方からすれば物足りないかも知れませんけれども、私なりに九州電力さんとはしっかり向き合って、そのたんび、そのたんびに厳しく対峙させて頂いているつもりでございます。ま、こうした姿勢はこれからも持ち続けていきたいと思います。

そして皆さん方が日頃、この10年間活動されていることは、この十分承知しておりますし、なかなか大変なことだったと思いますし、これからもそういう日々が続くんだろうと思いますけれども、私は、あの事故を風化させないために、皆さん方の様々な活動というものは、大変、意義のあるものだというふうに思いますので、改めて、敬意を表したいと思います。

これから同じこの原発に向き合う県民として、いろいろな所で皆さん方からご指摘いただくこともしっかりと受け止めながらですね、我々も、我々としての考え方を皆さんの前で表明できるようにしっかりしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

本日はありがとうございました。

(司会)「この後知事が別用なるものが入っていますので、ここで退席させて頂きます。」

豊島:一言、一言、私が申し上げる対話の件ですね、担当者との直接対話、この機会を設けて頂くということですけれども、これは即答いただけませんでしょうか?

山口知事:もう、できる限り。じゃあそのような形で。ま、勿論いつもいつもという訳にはいきませんけれども、時々皆さん方のお話を直接聞くということも大事ですので。

豊島:ぜひお願いしたいと思います。

山口知事:分かりました。はい、分かりました。ありがとうございました。


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