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県の回答へのコメント--リラッキングから緊急時対策所、テロ対策まで

佐賀県への2月28日付けの質問に、7月9日に県から回答がありました。それへのコメントを公表します(暫定版)。公表が遅れたことをお詫びします。
「玄海原発リラッキング等についての質問要望書」7月9日付県回答

次の画像クリックでQ&Aと簡単なコメントに飛びます。画像下に項目2、3、4についての詳細コメントに続きます。
QAimage.jpg

以下、項目2、3、4についての詳細コメントです。

2.代替緊急時対策所の問題について
福島原発事故のような重大事故が玄海原発で起こった場合、現在ある代替緊急時対策所では事故対応が迅速、適切にできないのではないかという疑問があります。重大事故時に外部からの応援ができなくても作業員100人が7日間、事故対応ができる環境が求められていますが、代替緊急時対策所の延床面積は、わずか200㎡(約60坪)です。

吉田所長が指揮した福島第一原発の免振重要棟の延べ床面積は3,601㎡(約1,100坪)です。この広さでも疲れ果てた多くの作業員が廊下に座り込んでいました。

完成が2023年9月と約4年間延期された玄海の正規の緊急時対策棟は6,080㎡(約1,800坪)です。代替の緊急時対策所の広さは約30分の1です。この図面が公開されています(リンク先https://www.nsr.go.jp/disclosure/law/PWR/00000469.html 、3号機の工事計画認可申請の補正書−2017年6月13日−のPDFデータ(90/93)の42(3)-12,13ページ(初めから97、98枚目)。

現在ある代替緊急時対策所の図面を見ると、106個の机が配置されていますが、背中合わせに座る机と机の距離は90cmしかなく、一人当たりの椅子のスペースは45cmです。23名分の要員待機スペース(休息・仮眠スペース)は26㎡、一人当たり広さは1.1㎡です。除染用シャワーは10㎡の出入り口スペース内に設置予定ですが、何台設置されるのでしょうか? 100人が使うトイレの広さはわずか約1.7㎡(約1畳)で、家庭用トイレの広さです。
実際に代替緊急時対策所を使って訓練をしてみればわかると思いますが、どう考えても福島原発事故のような重大事故に対処できる設備とは思えません。

また、緊急時対策所は、作業員一人当たりの被ばく量(緊急時)を1週間で100ミリシーベルト以下に抑えることが求められています。

九州電力は正規の緊急時対策棟の完成が遅れる理由の一つに「放射線遮へい性向上のための壁厚増加」などの設計変更や「工事物量増加」で時間を要していることをあげています。放射線の遮蔽性を向上させるためとしていることは、現状の代替施設では事故収束作業に当たる職員の命に係わる放射線防護の安全対策が不十分であることを示しています。

しかし、知事は2⑤の回答で原子力規制委員会が許可していると述べているだけです。代替緊急時対策所の設備では作業員に被ばくの犠牲を強いることになり、重大事故に対処できなくなる危険性があることに目を瞑っています。

3.原発の新検査制度について
今年度から原発の検査制度が変わり、規制委員会が13カ月ごとに行ってきた「施設定期検査(規制委が確認する)」は廃止され、九州電力が自ら行う「定期事業者検査(規制委は確認しない)になります。また、原発の運転期間がこれまでの13カ月から24カ月に延長できるようになります(前回の変更)。問題は原発が事故を起こさないように、しっかり検査が行われるかどうかということです。

県は、「原子力規制庁からは、・・・事業者の安全に対する一義的責任を明確化し・・・事業者が自ら改善していく活動を促すことで、事業者自らの気付きと規制機関の気付きの双方が改善活動の契機となり、結果として、更なる安全性の向上が期待されると聞いています」と回答していますが、これは施設定期検査で規制委が確認しなくてよい理由にはなりません。事業者が責任をもって点検修理するだけでなく、規制委の責任による検査が必要なのは当然のことです。

2月28日付の質問要望書別紙に書きましたように、これまで電力会社の事故隠しや、やらせメール問題など不祥事は後を絶ちません。そのような無責任さの行き着いた先が福島原事故です。検査を事業者任せにするのは危険です。

原発の運転期間が13カ月から最長24カ月に延長される問題を3④で質問していますが、県は九電から「運転期間延長の話はあっていません」として、回答を避けています。

これまで定期検査で機器の損傷が発見されてきましたし、損傷発生は予測できないので、運転期間を延長すれば損傷も大きくなる可能性が高まり、事故の危険性は増加します。

新検査制度は、米国の原子力規制委(NRC)のやり方を手本にしたものですが、地震も少なく安全対策も強化されている米国でも、時間とコストの節約で安全より利益を重視していると批判されています。

知事は検査に手抜きが生じないように、国と事業者に意見すべきです。

3⑧で定期検査時の地元雇用の減少については「承知していません」という回答ですが、危険な原発を地元が受け入れているのは地元の経済・雇用に原発がプラスになると考えられているからでもあります。雇用が減少するのは明らかですから、県は「承知していない」で済ませてよいとは思えません。

4.玄海原発のテロ対策について
  各国の原発には大型航空機が原子炉格納容器に直接衝突した場合の対策が求められているのは、原発が重大事故を起こせば放射能被害は地球全体に及ぶためでもありましょう。

しかし日本の原発の重大事故対策施設には、この肝心の対策がありません。経済性等を優先して規制委が要求しなかったのかも知れません。規制委も「安全神話」から抜け出していないようです。

県は、この対策がないことを職員を規制庁に出張させてまで確認しているにもかかわらず、私たちの4①の「格納容器の二層化を規制基準に加えるように規制委に申し入れすべきでは」という質問に、明確に回答していません。

「原子力発電においては、安全性の向上に終わりはないと考えています」という言い方を知事は繰り返していますが、それは当たり前のことです。しかし私たちは今後ではなく、現状を、今の対策で重大事故は本当に防げるのかどうかを問題にしています。いま事故が起きる確率はゼロではないのですから、現状を問題にするのは当然ではないでしょうか。

知事の現状を見ず、「安全性の向上に終わりがない」という言葉で問題を先送りにする態度は、原発立地県の知事としてふさわしくありません。
(以上)

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次は代替緊急時対策所を含む航空写真です。大きな白い屋根の建物のすぐ右上(北東)に、少し複雑な形の小さな白い屋根が見えますが、これが代替緊急時対策所です。すぐ左上に20mの「物差し」を置いていますので、いかにも小さいことがわかると思います。クリックして拡大して見て下さい。
代替緊急時対策所t.jpg

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