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玄海原発リラッキング等についての質問要望書を佐賀県に提出

さよなら原発!佐賀連絡会は2月28日,佐賀県庁を訪れ,玄海原発リラッキング等についての質問要望書を佐賀県に提出しました.以下にその文書を公表します.
翌日の佐賀新聞の報道
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2020年2月28日

佐賀県知事 山口 祥義 様
                     さよなら原発!佐賀連絡会 
                     代表 豊島 耕一

     玄海原発リラッキング等についての質問要望書

知事は、県民の安全対策にご尽力のことと思います。
福島原発事故が地元住民や国民に与えた被害、影響を考えると原発は稼働している限り、万全の対策が取られる必要があります。
また、県は事前了解等の判断の根拠として、事故を起こさないための可能な限りの対策が取られていることを確認されていると考えますので、そのことを県民にも詳細に知らせていただきたく、以下、質問と要望を致します。

1. リラッキングの問題について
(1) 使用済み燃料の保管量を増やす(1050体→1672体)ことで使用済み燃料プールの発熱量が増加します。福島原発事故時4号機プールは全電源喪失でプールの冷却と給水が不可能となり、米軍の計算では3月15日に水が無くなり、燃料のメルトダウンが心配されました(樋口英明「いのちを大切にする社会を作る・原発訴訟と裁判官の責任」NPO日本有機農業研究会2019年5月)。(偶然原子炉ウエルの水[注1]が流れ込み、燃料溶融は起きませんでした。)

 ① 玄海原発の使用済み燃料プールは、定期定検時の最も高い崩壊熱を発する燃料が入っている状態で冷却と給水ができない場合、燃料体のトップ(最上端)の高さまで水が減るのに最短何日かかりますか。

 ② リラッキング(私たちは「ぎゅうぎゅう詰め」と呼びます)ではプールの冷却、給水の設備は増強されませんが、全電源を喪失した場合、プールの冷却と給水はどのように行われますか。東海第2原発のように代替燃料プール冷却系や低圧代替注水系[注2]は、すでに設置されていますか。

 ③ 福島原発事故後、玄海原発の使用済み燃料プールの監視は、水位、温度、放射線の測定、カメラ等についてどのように強化されていますか。

 ④ 発熱量や中性子発生数が多い使用済みMOX燃料は、リラッキングされたプールにおいて使用済みウラン燃料と同じ扱いでよいのですか。特別な扱いであれば、違いを示してください。

(2)地震等で燃料集合体の間隔が狭まった場合でも臨界事故は確実に防げますか。点検中の核燃料がプールに入っている状態で臨界が起きるのは、燃料集合体間の距離がいくらになった時ですか。また、その場合の対策は、どのようになされていますか。

(3)使用済み燃料の搬出先は目途がないので、このままでは玄海原発で半永久的に保管されることになります。リラッキングを了解すると使用済み燃料がますます溜まり続けます。
搬出先とされる青森県の六ケ所再処理工場は1997年完成予定であったにもかかわらず、完成は24回も延期され、22年たった今も完成していません(次回の完成予定は21年度上期とされています)。
また、再処理の前提である高速増殖炉もんじゅは1兆円超の税金を使ったにもかかわらず、2016年に廃止が決定され、田中俊一規制委員会前委員長は核燃サイクルが実用化できる可能性はないと言い切っています[注3]。
 ① 知事は、玄海原発で使用済み燃料が半永久的に保管されることになってもよいとお考えですか。

 ② 前福井県知事の西川一誠氏と現知事杉本達治氏は、県内での中間貯蔵を認めず、関西電力に県外の搬出先を明示するように求めていますが、同様のことを九電に求める考えがありますか。

 ③ 搬出予定先である六ヶ所再処理工場が2021年度上期に完成すれば、使用済み燃料プールを大規模にリラッキングする必要はありません。県は、12月5日武藤県議の一般質問で、「九州電力は貯蔵設備の余裕確保のためにリラッキングを計画と認識」と答弁していますが、営利企業である九州電力が搬出先が見込めないために必要性からリラッキング(工事費70億円、電気料金から支払われる)を計画したのは明らかです。県の「余裕を確保するため」という認識は誤りで、搬出先の見込みがないからではないですか。

 ④ 同じ一般質問で、県は九州電力が積極的な情報公開と丁寧な説明を行う「取り組みを求めてまいります」と答弁していますが、県が考える「九州電力の積極的な情報公開と丁寧な説明」とはどのようなものですか。

 ⑤ 同質問への答弁で県は専門家の意見を聞くとのことですが、誰に、いつ、どのように聞くのですか。また、一般からも意見を公募してください。

2. 代替緊急時対策所の問題について
 緊急時対策棟の完成は2019年12月の完成予定が23年9月に延期され、約4年間代替施設のままということになります。
 代替の緊急時対策所は人員100人、孤立して7日間も事故収束作業に当たる可能性がありますが、建屋面積200㎡(対策棟は6,080㎡)、対策所面積は170㎡(対策棟は820㎡)、休息室も仮眠室も医務室もなく、水道設備もなく飲料水はペットボトル、除染はウエットティシュ使用、トイレは仮設、汚染水槽なしとされています。
 また、11月18日の佐賀新聞によると、九電は遅れている理由の一つに「放射線の遮蔽性を向上させるために壁の厚さを変更する対応に時間がかかった」ことをあげています。「放射線の遮蔽性を向上させるために壁の厚さを変更しなければならない」としていることは、現状の代替施設では事故収束作業に当たる職員の命に係わる放射線防護の安全対策が不足していることを示しています。
 代替緊急時対策所は新規制基準に適合しているとされていますが、あくまでも代替の施設でしかなく、緊急時対策棟の完成が約4年も遅れることは想定されていなかったはずです。

 ① 代替緊急時対策所では、居住性を確保するための機能、放射線防護のために必要な遮蔽と換気、放射線被ばく線量管理、汚染の持ち込み防止はどのようにして行われますか。

 ② 外部支援なしに1週間活動するために必要な、飲料水、食料等を備蓄することになっていますが、非常食と飲料水の備蓄量はいくらですか。

 ③ 代替緊急時対策所(延べ床面積200㎡)の指揮スペース、休息・仮眠スペース、資機材保管スペース、仮設トイレ、除染用簡易シャワーの位置と広さを図面で公開してください。

 ④ 県は、代替緊急時対策所で「同様の対応ができると聞いております」と答弁されています。30分の1の広さしかなく耐震性や放射線の遮蔽が十分とは考えられませんが、代替緊急時対策所と緊急時対策棟は、どこまでが同様で、どこが同様ではないとお考えですか。

 ⑤ 福島原発事故では「免震重要棟」がなんとか役割を果たしましたが、不十分な代替設備では事故収束作業は一層困難になると考えられます。事故はいつ起こるかわからず、十分な備えが必要なことは言うまでもありません。少なくとも4年後の緊急時対策棟の完成まで事前了解を取り消す必要があると考えますが、知事はどうお考えですか。

3. 原発の新検査制度について
原発の検査制度が4月から次のように変わります。
1)これまでの原子力規制委員会による13カ月ごとの「施設定期検査」は廃止され、九州電力(電気事業者)自らが検査を行う「定期事業者検査」という制度になります。
2)新検査制度では検査までの期間が13ヶ月から最長24カ月になっています。

これには、別紙に書きましたように大きな問題があります。以下お尋ねします。

 ① 県は、これまでの原子力規制委員会が行ってきた「施設定期検査制度」よりも、九州電力が自ら行う「定期事業者検査」のほうが安全性は向上すると考えているのですか。もしそうであればその理由を示してください。

 ② 現在検査官が年4回行っている検査はどのような検査ですか。その検査項目も示し  てください。

 ③ 新検査制度で「オンライン検査」という言葉が出てきますが、これはどういう検査の方法ですか。その検査項目も示してください。

 ④ 運転期間の延長を県はどう考えていますか。(九州電力はすぐには運転期間の延長をしないとは言っています。)

 ⑤ 新検査制度は原発の安全性向上よりも経済性を優先したもののように思われますが、県はどうお考えですか。

 ⑥ 県は九州電力に「うそはつかない」ことを改めて要望されているにも関わらず、新検査制度で九州電力が手抜きや不正を行わないと県は思われるのでしょうか。そうであればその根拠を示してください。

 ⑦ 同答弁で、「新検査制度について規制委員会に丁寧な説明をするように申し入れる」とされていますが、申し入れの内容と、規制委員会の回答を公表して下さい。

 ⑧ 定期点検時の地元雇用の減少につながりませんか。

4. 玄海原発のテロ対策について
 ① 県は新たな知見として格納容器の2層化を規制基準に加えるように、規制委員会に申し入れをすべきではありませんか。
 特定重大事故対処施設(テロ対策施設)の設置では、原子力規制委員会は大型航空機が格納容器に直接衝突した場合の格納容器破損を防ぐための対策を要求していませんが、欧州加圧水型炉(EPR)では大型航空機が直接格納容器に衝突した場合の防護策として格納容器の2層化が行われ、これは最新の科学知見と思われます。この知見を規制委員会が規制基準に取り入れていないことは、再稼働を急いだ意図的なもののようです。
 ② 大型航空機によるテロ攻撃が想定されていますから、県民の安全を考えるなら、知事は九州電力に少なくともEPR並みの対策を要求すべきと考えますが、知事はどうお考えですか。

 ③ また、格納容器の二重化が現設備では技術的に不可能ならば、他の対策を考えてその対策を示してください。

5. 再生可能エネルギーの出力制御について
 ① 県は、国に「優先給電ルール[注4]」を見直し、再生可能エネルギーを最優先にするように申し入れをしてください。現在の「優先給電ルール」では、原発の稼働を太陽光や風力発電よりも優先していますが、ドイツ等では重大事故を起こさず燃料費がゼロである再生可能エネルギーを最優先にしています。

 ② 佐賀県は再生可能エネルギー推進という立場を表明しています。
県は九州電力にまず、太陽光発電の必要以上の出力制御をしないように申し入れてください。また、なぜ揚水の活用や連携線を活用した他地域への送電が最大化までなされないのかを質問してください。
九州電力は太陽光発電の出力制御を必要以上に行うことによって太陽光発電の普及を阻み、同発電事業者に経済的損失を強いています。
 これは電力の需給がアンバランスになり停電を引き起こすというブラックアウトの問題ではありません。優先給電ルールで決められている「揚水発電による再生可能エネルギーの余剰吸収、火力発電の出力制御」「連携線を活用した他地域への送電」の最大化を行わず、必要以上の太陽光発電の出力制御を強いているという問題です。九州電力は4月1日、域外送電は243万kWまで可能と発表、揚水発電等は226万kWなので計469万kWまで可能になりますが、この実績は2019年10月13日以降年末まで286~391万kWに過ぎず、可能な値の61~83パーセントにすぎません。

6. 県のホームページに回答を掲載する場合、質問項目だけでなく、質問要望書の全文を掲載して質問者の考えが閲覧者に伝わるようにしてください。

7. 文書回答と原子力安全対策課長の直接面談の上での説明と意見交換の場の設定をお願いします。

[注1] 事故当時、炉心シュラウド取り換え工事のため原子炉上面に水が張られていた。使用済み燃料プールとの仕切り扉が何らかの衝撃で緩み、使用済み燃料プールへ水が流入した。石川迪夫「考証福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか」216ページ、日本電気協会新聞部、2014年
崩壊熱の時間的変化は、運転停止直後7%、1時間後2%、1日後0.5%、1年後0.1%。同上30ページ
4号機プールの崩壊熱は、他のプールと比べて4倍ほど高かった。事故から3日目には飽和温度100度Cに達し、その後は沸点に達して徐々に水位が減少している状態にあったと計算されている。同上210ページ

[注2] www.pref.ibaraki.jp/.../180124_8wt_siryou2-3.pdf  東海第二発電所 停止・冷却設備への対応について 2-3-13~14

[注3]「選択」(選択出版社)巻頭インタビュー、2019年11月号、3ページ。

[注4] 電力系統においては需要と供給の量が常にバランスするように調整することが必要。その際、法令等であらかじめ決められた「優先給電ルール」に基づいて、需給バランスの維持が行なわれる。

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別紙 原発の新検査制度についての私たちの懸念

これまでの原子力規制委員会が行う13カ月ごとの「施設定期検査」は廃止され、九州電力(電気事業者)自らが検査を行う「定期事業者検査」(事業者の一義的責任を明確化、1億円以下の罰金という罰則がある)になります(車検を自分・所有者の責任で行うようなものです)。
規制委員会は「定期事業者検査」では一切検査を行わず、事業者報告を受け取るだけで、抜き打ちでの点検(検査官がフリーアクセスできる)等「原子力規制検査に基づく監督」を行うとしていますが、検査が厳格化するとは考えられませんし、国の責任はあいまいで、責任回避になりかねません。
また、定検中に原発を止めて行っていた保守点検の多くを運転中に行い、記録を取って報告すればいいことになります(2017年4月原子炉等規制法改訂)。

また、2009年1月に施行された新検査制度では運転期間が最長24カ月になっています。今まで運転期間を延長して実施した原発はありません。(…2009年に改正され東通原発が最初に申請したが3・11事故で止まり、これまで運転期間を延長して稼働した例はないという意味です。)
例えば配管などの多少のひび割れ等の劣化が見つかっても、次の検査まで故障の原因にならないと判断すると「維持基準」に適合するとみなされ、保安規定変更申請を行い認可を受ければよいことになっています。そしてそのまま補修や交換をせずに最長24カ月まで運転できるようになります。
長期の運転のためには、核分裂性ウランの濃度を高めた「高燃焼度燃料」を使います。これは燃料棒内の放射性物質が増え、より大きい崩壊熱のため炉心溶融事故や長期連続運転による燃料棒破損事故の可能性が大きくなります。

新検査制度は米国の原子力規制委員会(NRC)のやり方を手本にしたものです(ポール・ガンター「闇により深く溶け込む原子力規制」原子力資料情報室通信2019年8月1日発行)。安全規制を緩和し、時間とコストを節約して安全より利益を追求するものとなっています。
これは、計画的な機器の分解修理作業を減らし、確率論的リスク評価で原発システムの故障時期を予測し、実際に故障するであろう数週間前に対応して(止めて修理して)故障を避けるという考え方によるものです。連続運転期間が18~24カ月へ延長され、設備利用率が1990年代に70~80%に急上昇し、2002年には91.5%に達しました。

以下のような過去の例を見ても、電力会社まかせで大丈夫と思えるでしょうか?
・1995年もんじゅナトリウム漏れで、事故現場のビデオの存在を隠蔽。
・2001年東電のデータ改ざんが内部告発で明らかになる。
・2007年中国電力の水力発電所のデータ改ざんを受けた総点検の結果、報告された不正は原発関連で7社104件。制御棒の脱落・誤挿入が19件うち2件は臨界事故。原子炉緊急停止が4件、不正な手段で定期検査に合格したケースは後を絶たず、規制当局も見抜けなかった。2020年2月9日付け日経新聞は4月に始まる新検査制度について「有能な検査官を育て続けなければ、新制度は十分な効果を発揮できない」と指摘。
・2005年九州電力は、プルサーマル公開討論会での動員問題、2011年住民説明会のやらせメール問題等、法令順守や企業統治に問題。知事は1月22日、池辺九電社長に「うそをつかない」ことを改めて要望。
・2月7日原子力規制委員会は、日本原子力発電敦賀2号機の地質データに不適切な書き換えがあると批判。

連絡先  杉野ちせ子 840‐xxxx 佐賀市xxxx
              xxx-xxxx-xxxx
        (ウェブ版では住所,電話番号は省略します.)
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