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原発テロ対策施設についての「原子力規制庁への確認結果」に関して県に質問

県からの回答(2019年10月8日付け)
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img_f31f60ad070d9e946b63a0be0892e40e671102.jpg(右の写真は12日の佐賀新聞の記事から。
  毎日も報道)
佐賀県の山口知事は、先月9日、玄海原発3、4号機のテロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重施設)」の建設計画を「事前了解」しましたが、その際に県の該当ウェブに公表された「別紙2:原子力規制庁への確認結果」は驚くべきものでした。その冒頭の「原子炉格納容器への大型航空機衝突について」の項目では、規制庁は、
「・ 新規制基準を策定する際、衝突に対する格納容器の強度等については議論されていない
・ 衝突に対する格納容器の強度等については具体的な数値が無く、評価できない
・ 国内の原子炉格納容器がどの程度の衝撃に耐えることができるのかについて、 実験やシミュレーションで解析したものはない。」
などと、「ないない尽くし」の回答をしたというのです。
このような事実を知りながらの「事前了解」はあり得ないはずです。
そこで本日(9/11)連絡会では県議会と県庁を訪れ、以下の要望書、質問書を提出しました。

また、「文藝春秋」9月号に掲載された、元東電技術者の「福島第一原発は津波の前に壊れた」と題する文章に関しても質問しました(岩波「科学」にはすでに2013年に発表*)。この事実が明らかになったのは全ての事故調の報告の後で、従って新規制基準にも当然反映されていません。この重大な事実をどう受け止めるかについても問うています。
  * 木村俊雄「地震動による福島第一1号機の配管漏えいを考える」科学(岩波)2013年11月号、

以下、県議会議長あて、県知事あての文書を紹介します。
 県知事への質問
 県議会議長への要望

なお、今日の県とのやりとりの中で新たな疑問が生じたので、次の質問を追加しました。
「設置許可基準規則第42条1項は、原子炉建屋(玄海3、4号機では格納容器)が(航空機が墜落しても)破損しないような頑健さを求めているものではないと、県は解釈しているのですか。」

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(県知事への質問)

          2019年9月11日

佐賀県知事 山口 祥義 様
              さよなら原発!佐賀連絡会 
              代表 豊島 耕一

テロ対策事前了解についての質問書

県の「原子力規制庁への確認結果」(事前了解 別紙2,8月9日)では、テロ攻撃時の県民の安全は保障されていませんので、事前了解はありえません。

原子炉等規制法では第1条で、「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行う」と定め、原子炉設置許可基準規則第42条1項で「原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムに対してその重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないものであること(下線は引用者)」と規定しています。

この重要な規定に照らして、「原子力規制庁への確認結果」[注1]の「1 原子炉格納容器への大型航空機衝突について」の項目の記述ごとに、問題点を指摘します。

1.原子炉格納容器への大型航空機等衝突に関して以下の内容を確認できた。 
・新規制基準を策定する際、格納容器の強度等については議論されていない。

問題点:原子力規制基準は、格納容器を頑丈にする等の大型航空機の衝突対策を要求していない。従って最も重要な格納容器の頑健化対策が行われないことが確認できる。

・衝突に対する格納容器の強度等については具体的な数値がなく、評価ができない。
・国内の原子炉格納容器がどの程度の衝撃に耐えることができるのかについて、実験やシミューションで解析したものはない。NEI(米国原子力エネルギー協会)などの海外の事例は承知しているが、それを参考に規制基準を作ってはいない。

問題点:これは、「大型航空機が衝突した場合に格納容器が壊れない強度があることは確認できなかった」ということを意味する。格納容器が壊れないという保証(強度)がないのだから、「テロ対策」として全く不完全と判断される。

 ・原子力規制庁では、建屋等に対する飛翔体の衝突影響については委託研究を行っている。(継続中)

問題点:研究結果が出てから、それを反映して必要な対策を講じるべきである。
既に規制委が別の件で参考資料としている『航空機衝突時の使用済み燃料貯蔵施設の耐衝撃評価((財)電力中央研究所研究報告№7040,2008年)』には、航空機が時速324キロで壁厚85cmの貯蔵施設に衝突した場合、航空機のエンジン(最も重い部分)は貯蔵施設の壁を貫通し、貫通後も時速216キロの速度を持つと解析されている。大型航空機の通常の速度は時速864キロ。また、玄海原発3、4号機の格納容器と一体型建屋の鉄筋コンクリート製ドームの厚さは約110cm。大型航空機が衝突した場合には格納容器は破損し、重大事故になると考えられる。

 ・ 原子炉格納容器の健全性(密封性)が担保できないような事故については、従来通り、大規模損壊時の対策である可搬型SA(過酷事故)設備等で対応する手順等を準備している。(以下略)

問題点:大規模損壊時に現可搬型SA設備(主には放水砲)等で対応できるかを検討するべきである。放水砲で65mの格納容器に届くのか、「見えない」放射能を十分に「射ち落とせる」のか。また、このような状況下で作業者の被ばくが避けられない(参考、福島原発1号機排気筒の側では事故直後10㏜/h,朝日新聞2019年5月9日付)。仮に原発を維持するとしても、そのための安全対策が不十分であれば、さしあたって原発は止めるというのが常識的な判断と思われます。

【質問事項】
1.大型航空機が直接原子炉格納容器に衝突した場合、過酷事故にならない保障のないことが明 らかになっています。
  この場合、県民の安全は保障されないので、当然玄海原発の3、4号機の事前了解は撤回され るべきだと考えますが、知事はどうお考えですか。


2.「テロ対策」とは別件ですが、最近、元東電社員で原子炉の専門家から「福島第一原発は津波の前に地震で壊れていた」という証言が一般雑誌に公表され、注目されています[注2]。現在の規制基準が「津波による電源喪失で壊れた」ということを前提にしており、もしこの証言が事実であれば、規制基準の基盤そのものが疑われることになり、玄海原発の地震対策が不十分であることが考えられます。
この証言に関して、知事は、県として独自にこれを検証されますか。また、規制委員会に、「津波の以前に地震で一次系の配管が破断し、冷却材の自然循環が止まっていた」という指摘の真偽をただすように要請されますか。それとも、従来のように、国の現在の判断で十分とされますか。

[注1] https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00370131/3_70131_144935_up_43j7psai.pdf
 [注2] 「福島第一原発は津波の前に壊れた」、木村俊雄、文藝春秋、2019年9月号。
 ただし専門誌には同氏による同趣旨の論文が2013年に掲載されている。
 木村俊雄、「科学」(岩波書店)2013年11月号、p.1223-1230。
2000年に退職するまで、12年間も福島第一原発の炉心の設計・管理業務を担ってきた元東電社員、木村俊雄氏(55歳)が「メルトダウンの第一の原因は津波ではなく地震動だった可能性が極めて高い」と告発。
木村氏によれば、メルトダウンなどの原発事故を検証するには、炉心の状態を示すデータ(「過度現象記録装置」という計算機が記録するデータ)が不可欠。木村氏は東電に「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求め、入手。
専門家でも解析が難しい膨大な数字の羅列をグラフ化し、事故前には原子炉内の炉心を流れる水量が毎時1万8000tもあったのに、地震発生から90秒後、つまり、津波襲来のずっと前に一転、炉心流量はゼロになってしまった(自然循環が止まった)ことを明らかにした。沸騰水型原子炉(BWR)では、水が原子炉圧力容器内で自然循環していれば電源喪失でポンプが止まっても、炉心の熱を約50%出力まで除去できる仕組みになっている。
木村氏は、この解析が示しているのは、地震で原子炉圧力容器につながるジェットポンプ計測細管が破損し、そこから冷却水が漏れ出てしまった可能性が高い、ということ。
この木村氏の解析が事実なら、13年に定められた原発の「新規制基準」は根本から見直す必要がある。メルトダウンは津波によって起こったが、その前の地震動では、主要な設備・機器は壊れなかったという前提で基準が作られている。木村氏の指摘が事実なら、配管を含め、すべての設備・機器の耐震基準を一から見直すことになり、原発の設計基準の大幅引き上げは不可避。

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(県議会への要望)

                2019年9月11日
佐賀県議会議長 桃崎 峰人 様
議員各位
                さよなら原発!佐賀連絡会 
                代表 豊島 耕一

テロ対策についての要望書 

県議会で、県の玄海原発テロ対策、「原子力規制庁への確認結果」について審議してください。
このような、ないない尽くしの「確認」による事前了解はあり得ません。知事に事前了解を撤回し、県議会と県民に説明した上で、県民から意見を聴取するように申し入れてください。

山口知事は8月9日、玄海原発テロ対策施設の建設計画に事前了解しました。
同時に、「原子力規制庁への確認結果」が公表されています。

原子炉等規制法では第1条で、「大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行う」と定め、原子炉設置許可基準規則第42条1項で「原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムに対してその重大事故等に対処するために必要な機能が損なわれるおそれがないものであること(下線は引用者)」と規定しています。

この規定を受けて原子力規制員会は、「故意による大型航空機の衝突その他テロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合」等のテロ対策を求めています。テロ攻撃の中で最も深刻な被害が予想されるのは大型航空機直撃による放射能を閉じ込める役割を果たす格納容器の損傷、破壊です。
もし、大型航空機の衝突によるテロ攻撃で格納容器と内部の原子炉冷却設備が破損すると,原子炉の核燃料は冷却されず燃料溶融、メルトダウン、メルトスルーは避けられません。今回設置されるフィルター付きベント設備も緊急時制御室も格納容器が壊れないことが前提の設備ですからこの場合役に立ちませんので、1986年のチェルノブイリ事故のように砂や鉛を投入して放射線の遮断と放射性物質の拡散を抑えるしかないという恐ろしい事態になりかねません。

テロ対策を取り入れた欧州加圧水型炉(EPR)は、格納容器防護のために格納容器を2重化し航空機衝突に耐える合計2.6mの2層のコンクリートの壁を設置することになっています(玄海原発のドーム部分のコンクリートの厚さは半分以下の1.1mです)。また、溶融燃料がコンクリートや水と反応して爆発することを防ぐためにコア・キャッチャーが設置されます。
しかしながら、玄海原発には、欧州加圧水型炉(EPR)のような大型航空機の衝突に耐える対策は全くありません。

●「原子力規制庁への確認結果」のないない尽くし!
県は事前了解の判断にあたって疑問点を原子力規制庁に問い合わせ、「原子力規制庁への確認結果」として事前了解と同時に公表しています(佐賀県のテロ対策事前了解について、別紙2『原子力規制庁への確認結果』[注1])。しかし、その内容は、次のように事前了解できるようなものではありません。

「1 原子炉格納容器への大型航空機衝突について
原子炉格納容器への大型航空機等衝突に関して以下の内容を確認できた。 
・新規制基準を策定する際、格納容器の強度等については議論されていない。
・衝突に対する格納容器の強度等については具体的な数値がなく、評価ができない。
・国内の原子炉格納容器がどの程度の衝撃に耐えることができるのかについて、実験やシミューションで解析したものはない。NEIなどの海外の事例は承知しているが、それを参考に規制基準を作ってはいない。
 ・原子力規制庁では、建屋等に対する飛翔体の衝突影響については委託研究を行っている。(継続中)
 ・ 原子炉格納容器の健全性(密封性)が担保できないような事故については、従来通り、大規模損壊時の対策である可搬型SA設備等で対応する手順等を準備している。(以下略)

 以上の通り、県は格納容器に大型航空機が衝突しても壊れない強度があるかどうかわからないことが「確認できた」と言っていますから、「大型航空機が衝突した場合に格納容器が壊れない強度があることは確認できなかった」ということになります。格納容器が壊れない保証(強度)がないのですから、事前了解は当然「できない」はずです。

 また、「原子力規制庁への確認結果」の1の最後にある「原子炉格納容器の健全性(密封性)が担保できないような事故については、従来通り、大規模損壊時の対策である可搬型SA設備等で対応」と言うのは、消防用の放水砲[注2]のことです。つまり格納容器から放出される放射能を人が狙って水で撃ち落とすということが考えられていますが、放射能は見えませんし、放水砲で65mの高さの格納容器に届くのかも疑問です。何より、放射能が降り注ぐ中で生身の人間は作業できません(参考、福島原発1号機排気棟筒の側では事故直後10Sv/h,朝日新聞5月9日)。これが格納容器大規模損壊時の対策ならば、住民の甚大な被害は避けられません。

 落合県民環境部長は、6月17日の武藤明美議員の一般質問で、「今回の特重施設が原子炉の破壊そのものに対する備えではないのではないかと、それで安全と言えるのかというご指摘がございました。確かに、あらゆる攻撃に対して今回の対策で十分かどうかはわかりません。(以下略)」と答弁しています。「今回の対策で十分かどうかわからない」状況では事前了解の判断はできないのではないでしょうか。
 
 県議会には、県行政を県民の安全を第一に考えてチェックすることが期待されています。
 ぜひ、県議会で今回の玄海原発のテロ対策が県民の安全を保証するものになっているかどうかを、審議していただくようにお願いいたします。

[注1] http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00370131/index.html
[注2] 2017年2月~3月玄海原子力発電所に関する住民説明会の説明資料
 https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/shinsa_setsumei.html
 玄海原子力発電所3・4号炉に関する審査の概要28ページ
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